確定申告が終わっても安心できない?社長が知っておくべき税務調査のリアル

確定申告が終わっても安心できない

税務調査で真っ先に狙われる「2つの計上もれ」

確定申告の時期が終わると、多くの経営者が「これで一安心」と肩の荷を下ろします。
しかし税務の現場にいると、実はこのタイミングこそ注意が必要だと感じます。

なぜなら、申告が終わった後こそ税務調査の対象になる可能性が高まるからです。

「きちんと申告しているから大丈夫」と思っていても、税務署の視点で見ると、意外と見落とされているポイントがあります。
特に税務調査でよく指摘されるのが、次の2つです。

  • 売掛金の計上漏れ
  • 棚卸(在庫)の計上漏れ

どちらも「悪意のないミス」が非常に多い項目です。
しかし、数字への影響が大きいため、税務調査では真っ先にチェックされるポイントでもあります。

今回は、この2つの落とし穴について整理していきます。


売掛金の計上漏れ

「入金日」で売上を計上していませんか?

税務調査で最もよく指摘されるのが、売掛金の計上タイミングのズレです。

多くの経営者が、次のようなタイミングで売上を計上しています。

  • 通帳に入金された日
  • 請求書を発行した日

しかし、税務上の原則はこれとは異なります。

売上計上の基本ルール

売上は次のタイミングで計上するのが原則です。

  • 商品を引き渡した日
  • サービスが完了した日

つまり、お金が入るタイミングではなく、取引が成立したタイミングで売上を計上する必要があります。

よくある具体例

例えば、12月決算の会社で次のような取引があったとします。

  • 12月30日:商品を納品
  • 1月10日:請求書を発行
  • 2月20日:入金

この場合、売上計上はどこになるでしょうか。

答えは 12月 です。

しかし実際には、

  • 1月売上にしている
  • 2月売上にしている

というケースが少なくありません。

税務署はここを徹底的にチェックし、次の書類を突き合わせます。

  • 通帳
  • 請求書
  • 納品書
  • 作業完了報告書

これらの日付を照合することで、売上の計上漏れを見つけ出します。

たった1日のズレでも「期ズレ」として修正対象になることがあります。

棚卸の計上漏れ

在庫は利益を直接動かす

2つ目のポイントが、棚卸(在庫)です。

在庫は税務上、とても重要な数字です。
なぜなら、在庫の金額はそのまま利益に影響するからです。

簡単に言うと、次のような関係があります。

  • 在庫が多い
    → 利益が増える
    → 税金が増える

逆に、在庫を少なく計上すると利益が減り、結果として税金も減ります。

仕入れた商品はすぐ経費にならない

ここで重要なのが次の考え方です。

仕入れた商品は、売れるまで経費になりません。

例えば、

  • 100万円分の商品を仕入れる
  • そのうち50万円分しか売れなかった

この場合、残り50万円は在庫として計上しなければなりません。

しかし棚卸を正確に行わないと、

  • 売れていない商品を数え忘れる
  • 倉庫の奥の商品を見落とす

といったミスが起こります。
その結果、経費を多く計上した状態になってしまうのです。

見落とされやすい「預け在庫」

棚卸で特に注意したいのが、預け在庫です。

預け在庫とは、次のようなものです。

  • 外注先に預けている材料
  • 加工中の商品
  • 倉庫会社や配送業者に預けている在庫

これらは自社の手元にありません。
そのため、棚卸の際に見落とされることが非常に多いのです。

しかし税務上は、自社の資産として在庫に含める必要があります。

税務調査では、

  • 仕入金額
  • 売上金額
  • 在庫金額

の数字の動きを分析します。

そして、

「仕入れたはずの商品が、売上にも在庫にもなっていない」

という不自然な動きを見つけ出します。
税務調査官は、こうした数字の流れから在庫漏れを判断するのです。

例外:現金主義という特例

なお、小規模な個人事業主の場合、現金主義という特例が認められることがあります。

現金主義とは、

  • 入金があったときに売上計上
  • 支払いがあったときに経費計上

というシンプルなルールです。

ただし、この特例は適用条件があります。
基本的には、今回説明した発生主義が一般的なルールになります。

まとめ税務調査で必ず見られる2つのポイント

今回のポイントを整理すると、次の通りです。

税務調査でチェックされる代表的な項目は

  • 入金日ではなく、発生時点での売上計上
  • 預け在庫まで含めた正確な棚卸

この2つです。

どちらも、悪意のある脱税というよりは、単純な勘違いや管理ミスで起きるケースがほとんどです。

しかし、だからこそ注意が必要です。
真面目に申告していても、基本ルールを誤っていると、後から

  • 修正申告
  • 追加納税
  • 延滞税

といった負担が発生します。

せっかく正しく経営しているのですから、税務の基本ルールを押さえて、安心できる決算を行いたいものです。

確定申告はゴールではありません。
その申告が「正しいかどうか」を問われるのが税務調査です。

日々の記録と管理を丁寧に行うことが、最大の防御になるのです。


【動画】確定申告してるのに!?税務調査で真っ先に狙われる「2つの計上もれ」

投稿者プロフィール

伊澤真由美
伊澤真由美
■ 伊澤 真由美(いざわ まゆみ)
税理士/税務のスペシャリスト

ベネフィットグループ創業以来、田崎とともに走り続けてきた税務の専門家。
決算・申告・税務調査対応など、実務に強い税理士として多くの中小企業を支えてきた。
理論だけでなく、現場で本当に使える税務判断に定評がある。
ベネフィットの「税務の軸」 を支える存在。