【この記事の要約】
「試用期間中なら簡単に解雇できる」という考えは、現代の裁判規範では極めて危険な誤解です。
客観的な合理性がない解雇は不当解雇とみなされ、多額の賠償リスクを負います。トラブルを防ぐには、就業規則に「延長規定」を設け、客観的な「評価シート」で改善のプロセスを可視化する実務的な対応が不可欠です。
1.経営者が陥る「試用期間」の甘い罠
こんにちは、社会保険労務士の櫻井です。
現場の経営者の方から「採用したばかりの社員が期待外れだった。お試し期間なんだから、すぐに辞めてもらっても問題ないよね?」という相談をよく受けます。お気持ちは痛いほど分かりますが、社労士として断言します。その認識は即、改めてください!
もし不当解雇として訴えられれば、解雇期間中の賃金(バックペイ)に加え、慰謝料や弁護士費用まで、多額の支払いを命じられる「地獄のシナリオ」が待っています。
2.なぜ「能力不足」だけでは解雇できないのか?(三菱樹脂事件の教訓)
日本の労働法において、試用期間に関するルールを決定づけたのが、最高裁まで争われた「三菱樹脂事件」です。
この判決の本質は、たとえ試用期間中であっても、解雇には「客観的に見て納得できる理由」がなければ認められないという点にあります。法律上、試用期間はすでに「解約権留保付雇用契約」という立派な雇用状態です。
特に以下の点は、裁判で厳しく問われます。
- 「期待外れ」という主観的な評価ではないか?
- 会社がどれだけ教育し、改善のチャンスを与えたか?
- 他部署への配置転換など、解雇を避ける努力をしたか?
「仕事が遅い」「ミスが多い」といった理由だけで、教育の記録もないまま解雇に踏み切るのは、非常にリスクが高いのです。
3.実務で使える!泥沼化を防ぐ「たった一つの解決策」
トラブルを未然に防ぐため、私が推奨している具体的な実務対応は、就業規則に「試用期間の延長規定」を設けておくことです。
延長規定を活用するメリット
試用期間の終了直前に「採用か解雇か」の二択で白黒つけようとするから、感情的な対立が生まれます。そこで、「今のままでは本採用は難しいが、あと3ヶ月チャンスを与えるので、この項目を改善してほしい」と書面で通知し、期間を延ばすのです。
これには2つの大きな効果があります。
- 「改善の機会を与えた」という強力な証拠になる(裁判での防御力アップ)
- 本人に覚悟を促す(自発的な改善、または納得感のある退職へ繋がる)
あわせて、本採用の可否を判断する「客観的な評価シート」を導入し、プロセスを可視化することが不可欠です。
4.自力でのルール作りが「設定の沼」にハマる理由
「よし、すぐに延長規定を作ろう」と動かれるのは素晴らしいことですが、注意が必要です。
就業規則は「会社を守る盾」ですが、設定項目は多岐にわたり、法律の最新の解釈から一文字でもズレると、いざという時に「穴だらけのルール」として機能しなくなります。これを私は「設定の沼」と呼んでいます。
せっかく作ったルールが裁判で否認されては意味がありません。だからこそ、導入の設定は私たち専門家に任せてしまうのが、結局は一番の近道なのです。
まとめ:強い会社づくりのために
試用期間のトラブルは、経営のエネルギーを著しく奪います。
- 解雇には「客観的・合理的な理由」が必要
- 会社側の「教育責任」が厳しく問われる
- 「延長規定」と「評価シート」でプロセスを可視化する
- 独学ではなく、専門家と共に「戦える規則」を整備する
パニックになる前に、まずは一度ご相談ください。現場の声をしっかりとお聞きし、あなたの会社を守るオーダーメイドの就業規則を作成します。
今日も、“強い会社づくり”を続けていきましょう!
【動画】【解雇トラブル】「試用期間なら簡単にクビにできる」という危険な勘違い!経営者を待ち受ける地獄のシナリオ
投稿者プロフィール
- ■ 櫻井 智(さくらい さとし)
社会保険労務士/労務・人事の専門家
2017年にベネフィットグループに参画。
労務管理・社会保険・人事制度設計を中心に、
中小企業の「人」に関わる問題を数多く解決してきた。
櫻井の加入により、ベネフィットのサービスはより実践的で厚みのあるものとなっている。




