2026年2月。
「ついに初めての社員を採用しました!」
そう報告してくださる社長の表情は、誇らしく、そしてどこか緊張感もにじんでいます。
一人で走ってきた事業が“チーム”になる瞬間。それは経営者にとって大きな節目です。
しかし同時に、こんな不安の声も聞こえてきます。
「給料を払う以外に、何をすればいいんでしたっけ?」
実は、一人目を雇った瞬間から、会社には“公的な義務”が一気に発生します。
ここを曖昧にすると、後から修正するのは非常に大変です。
今回は、初めて社員を採用した社長が絶対に押さえるべき3つのポイントを整理します。
初めての社員採用で絶対に外せない3つの実務
① 保険の加入手続き ― 給料の「約15%」を忘れていませんか?
社員を一人でも雇ったら、次の手続きが必要です。
・労災保険
・雇用保険
・健康保険
・厚生年金
特に法人の場合、社長一人の会社でも原則として社会保険加入義務があります。
ここで多くの社長が驚くのが「会社負担分」の存在です。
たとえば額面20万円の社員を雇う場合、
・社員負担分とは別に
・会社が約15%前後を追加負担
する必要があります。
つまり、実質的な人件費は約23万円程度になる計算です。
「給料20万円なら払える」と思って採用すると、社会保険料の負担で資金繰りが苦しくなるケースもあります。
人を雇うということは、“固定費が増える”ということ。
その現実を正しく把握することが第一歩です。
② 雇用契約書の締結 ― 口約束は必ずトラブルになる
一人目の社員は、知人や紹介経由であることも多く、「信頼関係があるから書面はいらない」と考えがちです。
しかしこれは非常に危険です。
法律上、会社は労働条件を明示する義務があります。
・賃金
・労働時間
・休日
・残業代の扱い
・試用期間の有無
これらを記載した「労働条件通知書」や「雇用契約書」を交わさなければなりません。
特に危険なのが、
「給料に残業代を含んでいるつもりだった」
というケース。
書面で明確にしていなければ、後から数百万円規模の未払い請求につながることもあります。
契約書は不信の証ではありません。
信頼を“形”にするための道具です。
③ ルール作り ― 10人未満でも就業規則は必要
従業員が10人未満の会社には、就業規則の作成義務はありません。
しかし私は、一人目の時点から簡易的でもルールを整えるべきだとお伝えしています。
たとえば、
・遅刻や欠勤の連絡方法
・副業の可否
・SNS投稿の取り扱い
・有給休暇の取得ルール
ルールがない会社では、判断基準が「社長の気分」になりがちです。
それは社員にとっても不安材料になります。
逆に、ルールが明確な会社は、
・社員が安心して働ける
・問題社員への対応根拠になる
・組織拡大時にもスムーズに運営できる
という大きなメリットがあります。
一人目の時こそ、会社の「文化」を決めるタイミングなのです。
一人目の採用は「土台作り」
改めて整理すると、やるべきことはこの3つです。
・社会保険・労働保険の加入(コストも含めて設計)
・雇用契約書の締結(口約束はNG)
・社内ルールの整備(安心できる環境づくり)
採用はゴールではありません。
組織経営のスタートラインです。
最初に曖昧な状態で走り出すと、後からの修正は何倍もの労力がかかります。
逆に、一人目の段階で土台を固めておけば、その後の成長は驚くほどスムーズです。
「人を雇う」という決断は、会社が次のステージに進んだ証拠。
だからこそ、勢いだけでなく、責任と仕組みをセットで整えることが、強い会社づくりの第一歩なのです。
【動画】【保存版】「一人目」を雇ったら絶対見てください!初めて社員を採用した社長がやるべき3つのこと
投稿者プロフィール
- ■ 櫻井 智(さくらい さとし)
社会保険労務士/労務・人事の専門家
2017年にベネフィットグループに参画。
労務管理・社会保険・人事制度設計を中心に、
中小企業の「人」に関わる問題を数多く解決してきた。
櫻井の加入により、ベネフィットのサービスはより実践的で厚みのあるものとなっている。




