突然の退職代行からの連絡に、動揺してしまう経営者の方は少なくありません。
しかし、感情的な対応はかえって会社をリスクに晒すことになります。
社会保険労務士の櫻井です。
今回は、エース社員から突然「退職代行」を使われてしまった実例をもとに、
会社を守るための「徹底抗戦」マニュアルを解説します。
感情的な連絡はNG!まずは冷静な対応を
「今日で辞めます」という一方的な通告に、怒りやショックを受けるのは当然です。
しかし、本人に直接連絡を取ろうとするのは禁物です。
無理に連絡をすれば、「パワハラ」として扱われるリスクがあります。
会社が不利にならないためには、まず立ち止まり、法的な正当性を持って対処することが肝心です。
対策①:相手が「弁護士」か「民間業者」かを確認する
退職代行業者から連絡が来たら、まずは相手の正体を見極めましょう。
相手が「弁護士」なのか「ただの民間業者」なのかで、対応は180度変わります。
- 弁護士以外の業者には「交渉権」がありません。
- 「有給を買い取れ」といった交渉は違法な非弁行為に当たる可能性があります。
- 民間業者に対しては交渉に応じる必要は一切ありません。
- 対応としては、「本人から書面で連絡させてください」と伝えるだけで十分です。
毅然とした態度を示せば、業者側もそれ以上踏み込めなくなります。
対策②:貸与物の返却まで「退職手続き」を保留する
PC、スマホ、制服、社員証などの会社貸与物を返却せずに辞められては、情報漏洩や紛失などの大損害に繋がりかねません。
そこで、以下の毅然とした対応を取ります。
- 「貸与物の返却とデータ確認までは、退職手続きを保留する」と伝えます。
- 返却が完了するまでは、離職票や資格喪失証明書の発行を止めることは、正当な理由として認められます。
- 就業規則に規定がある場合は、「秘密保持誓約書」も必ず提出させましょう。
「備品を返さなければ手続きが進まない」という状況を作ることで、会社の資産を守ります。
対策③:引継ぎ拒否には「損害賠償」を視野に通知する
最も困るのは、引継ぎが一切行われないことによる現場の混乱です。
「引継ぎをしないなら退職金は払わない」と言いたいところですが、
退職金は賃金の後払い的性格があるため、安易な減額は違法になる恐れがあります。
有効な対抗策は、「業務命令書」の送付です。
- 内容証明郵便で、「引継ぎを行わなければ、損害賠償請求も辞さない」と通知します。
- 法的責任を明確に突きつけることで、相手に事の重大さを認識させます。
実際、この通知を行ったことで、翌日に慌てて引継ぎデータが送られてきたというケースもあります。
退職代行に泣き寝入りしないために
退職代行を使われたからといって、会社がすべてを諦める必要はありません。
- 弁護士以外には交渉権なし。毅然と拒否する。
- 備品返却が完了するまで、退職手続きは保留する。
- 引継ぎ拒否には、損害賠償を視野に入れた「業務命令」で対抗する。
日頃から就業規則の整備や業務フローの明文化を行っておくことが、万が一の際の強力な武器になります。
もし突然のトラブルに不安を感じたら、一人で悩まずにぜひ専門家へご相談ください。
トラブルに強い組織作りを全力でサポートいたします。
【動画】「明日から来ません」退職代行を使われたら?会社を守る「徹底抗戦」マニュアル
投稿者プロフィール
- ■ 櫻井 智(さくらい さとし)
社会保険労務士/労務・人事の専門家
2017年にベネフィットグループに参画。
労務管理・社会保険・人事制度設計を中心に、
中小企業の「人」に関わる問題を数多く解決してきた。
櫻井の加入により、ベネフィットのサービスはより実践的で厚みのあるものとなっている。




